2009年よりNY在住で、共にファッション業界に身を置くロン毛(Wataru Shimosato)と坊主(Ryo Miyamoto)が綴るブログです。

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映画「ディオールと私」感想 〜メゾンの生き様と真のラフシモンズ像〜

映画「ディオールと私」感想 〜メゾンの生き様と真のラフシモンズ像〜

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

 

 

 

先日、リビングのソファに座りながらパソコンで作業をしていたら

彼女が横でいつものように映画を観始めました。

これはうちでは結構日常なことで

映画やドラマが好きな彼女は私の横で自分のパソコンを開き、

何かしら観ています。

 

私は普段あまり映画やドラマに興味がないので観ないのですが

その日は作業をしながらチラチラとその映画を覗き見しおり

気がつけば作業そっちのけで映画に見入って最後まで没頭してしまいました。

 

その映画は2014年にTribeca Film Festivalに出品され

2015年に公開されたドキュメンタリー映画「Dior and I」です。

邦題は「ディオールと私」となっていますが、

わざわざ邦題をつける意味はあるのだろうかと思ってしまうような邦題です。


さてファッションが好きな人は見に行った人も多いかもしれません。

内容はクリスチャンディオールのメゾンに

デザイナーのラフシモンズが招かれ、

オートクチュール部門のアーティスティックディレクターに就任してから

2012年秋冬のオートクチュールコレクション当日までの舞台裏8週間を

ドキュメンタリーで追ったもの。


このシーズンはジョンガリアーノが差別発言でメゾンを追放されて以来の後任として

ラフシモンズが初のオートクチュールのディレクターに大抜擢されたシーズンで、

私もサイトでコレクションをチェックして印象的なシーズンでした。

この辺りのルックが特に印象に残っています。(出典 : vogue.com)

ラフが創るディオールクチュールに多くの人が注目していました。

(写真左に元ランバンのアルベール・エルバスやNYLON JAPANの戸川編集長が写っているのにも目がいってしまいますが。)

 

コレクション全編の動画はこちらからどうぞ。

 

私はあまり映画評論は上手くないと思うのでサラッとまとめますが、

普段見ることのできない一流メゾンの職人の手仕事の世界、

キラキラと輝かしいコレクションの舞台裏、

デザイナー、ラフシモンズの人間味のある感情表現、

そして一流の人の仕事の流儀なんかを垣間見れる作品です。

 

また舞台がパリということもあり、主な言語はフランス語。

美しいフランス語の語源が心地いいです。

全編で89分というちょっと短めのストーリーなのも、

集中してみるのには丁度よく

1時間を過ぎたあたりからのクライマックスへの緊張感がいいテンポを生んでいます。

 

そしてなんといっても、

この映画はラフシモンズだけではなく、

ハウスで働く職人それぞれをラフと同様に尊重し、

普段表に出ない役の人々もしっかり切り取っている部分は

まさしく、"ディオールと私"というタイトルに相応しものだと感じました。

 

ファッションやアートなんかの美しいモノ好きな人はもちろん、

そういったことにあまり興味のない人にもオススメできる映画です。

 

 

さてここからは、

私が個人的に作中で気になった、またはグッときた場面をピックアップしてご紹介します。

ネタバレが含まれますので予備知識無しにこれから映画を見たい方はご注意ください。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

"We still work for Dior. His spirit is still here."

"Apparently there are ghosts in this house.  It's Mr. Dior checking on our work."

「私たちはディオール(創設者)のために働いているの。彼の魂はまだここにあるわ。」

「この建物には幽霊がいるの、ミスターディオールが私たちの仕事ぶりをチェックしてるのね。」

 

職人の人々みんなが

メゾンの創設者であるクリスチャン・ディオールを尊敬し働いているのが見て取れる場面。

この世を去っても尚、職場の全員から慕われる人というのは世界にどれほどいるのでしょうか。

同時にみんな自分の仕事に誇りを持っているのが見て取れます。

そんな生き方、素敵だと思いました。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

"Challenge, huh? New couture. But I don't want to give up. I never give up, until the first girl is on stage."

「条件が厳しいか?新しいクチュールだ。でも私は諦めたくないし、最初のモデルがショーのステージに立つまでは絶対に諦めない。」

 

ラフが作るのが難しい生地の製作を要請している場面。

このラフの言葉は、チームのみんなの支えになる一言だなと思いました。

トップに立つ人間が最後まで諦めないという姿勢、

こういう姿勢はチームに伝染するはず。

何をするにもまずは上に立つ人間が情熱を持つことが一番大切だと思っている私は、

この一コマに激しく共感を覚えました。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

"I also found myself in the last couple of years, in a situation where the audience see me as a minimalist. And, uh... I'm not. But does that mean that I am only about minimalism? Well, let them judge after the show, I would say."

「ここ何年か、人々は私のことをミニマリストとして見てることに気づいたけど。。。私はミニマリストではない。私がミニマリズムのみを表現しているって人々は思ってる?じゃあその答えは、このショーの後に世界に判断してもらおうか。」

 

これはちょっとファッション関係の話になりますが。

おそらく昔からのラフのメンズウェアを見てきている人や

時にミニマリズムの女帝と評されるジルサンダーのブランドのクリエイティブディレクターを

2005年から2011年まで務めていたラフのことを

私も含め多くの人々はミニマリストと評していたわけですが

彼自身が「私はミニマリストではない。」と発言しているのを見て驚きました。

しかしこの映画を見て改めてここ数年のラフのメンズコレクションを見てみると、

人々にミニマリストと評されることに抵抗するかのような作品も創作しており

パッと繋がったような気がしました。

彼は世間からの評価や親会社の大人の事情と

本来の自分の表現の間で葛藤していたのかもしれません。

 

そしてラフが自身のレーベルで2014年秋冬メンズコレクションで披露した

Raf Simons / Sterling Rubyのコレクションは、

この映画を見て納得しました。(出典 : vogue.com)

しかし、まさかDiorクチュールで起用したアーティストを

別レーベルでもう一度起用できたもんだなぁなんてお節介なことを思って見ていました。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

 "I have an idea. But it's very extreme."

「アイディアがある、けれどこれはちょっとイキ過ぎてる。」

 

これは以前書いた記事「一流の人の共通点 part 3」の内容にも繋がることなのですが

やはり一流の人は自分のやりたいことや、進むべきビジョンが明確なんだなぁと改めて思いました。

そこに金銭的な問題や諸事情があるとしても、

後から出てくる問題をどうにかクリアしながら進めるには

まず何よりもアイディアを持つ、ビジョンを持つことが大前提ですよね。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

"Sublime, huh?"

「荘厳じゃないか?」

 

この映画を見ていて気付いたのですが

ラフは素晴らしく気に入ったものや美しいもの評価する際に

"Sublime = 荘厳な、至高な、この上ない"という単語を使います。

この表現の感覚はとても上品というか、

ラフの人間としての美しさのようなものを感じました。

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

"I guess you didn't have any budget issues."

「予算的な問題はなかったようね。」

 

会場に到着したUS Vogue編集長、アナ・ウィンターが

生花で埋め尽くされた会場を見てラフに言った一言。

笑いながら皮肉めいた冗談を言うアナに、

ラフも苦笑いで「でもいい匂いでしょう?」と返答するやり取りにクスッとしてしまい、

やけに印象に残っているセリフの一つです。笑

 

ロン毛と坊主とニューヨーク Dior and I ディオールと私

クライマックスはなかなか泣かせてくれました、私は泣いていませんが。

ラフはショーの前に

"I'm not going to... I don't want the catwalk. I cannot do it."

「いや私は、、、私はフィナーレでキャットウォークは歩きたくないし歩かない。」

と言っていたのですが、

ビッグメゾンでの、しかも自身としても初めてのオートクチュールへの挑戦が終わり

Diorファミリーにも受け入れられたラフは

感極まって自ら「行かないと!」と言ってフィナーレを歩きます。

最後は歓喜の渦に涙ありの人間ドラマでした。

 

エンディングのテーマ曲が私の好きな

The XXのReunion (Ame Remix)だったのにもテンションが上がりました。

 

 

というようなところで、

映画を普段見ない私ですがこの映画はかなり好きでした。

よろしければ是非。

 

今年の10月に発表された2016春夏のパリコレクションの後に、

ラフが3年半程手がけてきたディオールを去ることが報じられましたが

ラフのディオールは評価が高かっただけにファッション業界は騒然となりました。

 

ちなみにディオールでのラフの後任はまだ見つかっていないようで、

次シーズンのオートクチュールとプレタポルテは

デザインチームが手がけるというニュースもつい数日前に発表されました。

 

ラフなきディオールの後任探しも気になりますが、

とりあえず"Dior and I"はアメリカではNetflixで見れますので

気になる方は見てみてください。


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