2009年よりNY在住で、共にファッション業界に身を置くロン毛(Wataru Shimosato)と坊主(Ryo Miyamoto)が綴るブログです。

海外生活を通して培ってきた考え方、仕事論、ファッションネタ、NY観光情報など雑多に更新中。

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ゲストエディター

日本のファッション雑誌、そろそろ目を覚ました方がいいと思います。

日本のファッション雑誌、そろそろ目を覚ました方がいいと思います。

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こんにちは、「ロン毛と坊主とニューヨーク(@longebose)」のロン毛、下里(@watarubob)です。

 

さて今回ですが、日本の雑誌社とお仕事させていただくことに関して、私が以前からずっと疑問に思っていたことについて書こうかと思います。

この投稿はあくまで業界全体について私が個人的に持っている意見であり、特定の個人を批評する内容ではありません。

私と同じようにフォトグラファーとして雑誌社と関わりがある方、逆に雑誌の編集部員の一員として外部のクリエイターに仕事を依頼する立場にある方、業界は違えどフリーランスとして仕事を受ける人など、それぞれの立場から今一度真剣に考えていただきたい内容でもあります。

 

このブログを初めて読んでくださる方や私のことをご存知無い方のために少し自分のことを書かせていただくと、私はニューヨークでフリーランスのフォトグラファーとして仕事をさせていただいております。

主にストリートスナップという、ニューヨークの街でお洒落な人を撮ることを専門として、今まで国内外の様々なファッション雑誌、ウェブ媒体、ブランドの写真などを撮影してきました。

 

写真を仕事として始めてから数年間、私は普段みなさんが本屋さんやコンビニなどで目にしたことがあるような日本のファッション誌のお仕事をさせていただいてきたのですが、ここ最近では日本の雑誌社からのオファーをお受けすることはかなり減ってきました。

というのも、写真を撮ることを仕事として以降、雑誌社から受けるオファーの多くに疑問を抱いていたからです。

特に日本のファション誌のギャランティ、要するに仕事の対価としていただくお金のやりとりについて。

 

ページ単価という編集部本位なシステムに踊らされる外部クリエイターの現状

私は主にファッション誌との仕事しかしていないので、日本の他の雑誌がどんな支払いシステムなのかはわからないのですが、ファッション誌の支払いシステムの多くがページ単価で決まることが多いです。

 

ページ単価、つまり私の場合は自分の撮影した写真が1ページに掲載される毎にお金をいただける、という感じですね。

ストリートスナップのお仕事の依頼としては、「今回は〜〜特集となっており、△△を身に着けた20名分のお洒落なニューヨーカーの女性を撮影していただきたいです。掲載は4ページで予定しておりギャランティはページあたり○○円お願いできますでしょうか?」というような、だいたいこんな内容で私の元に撮影の依頼メールが届きます。

この例でいうと最終的にいただける予定の金額は「○○円 × 4ページ」ということになるのですが、この「ページ単価で外部のアーティストやクリエイターに仕事を依頼すること」に対して、私は疑問を感じずにはいられません。

 

実際に4ページ掲載予定のギャランティをいただく前提でお仕事をさせていただき、指示された通りに20人分の写真を撮影し納品したとします。

ところが掲載前になり急にホットな話題が浮上して特集内容やページ数を変更する、あるいは他の特集でバジェットを使い過ぎてしまったり、他の企画のページが予定よりも多くなるなんてことも、恐らく雑誌の編集の仕事では少なくない話だと思います。

 

そうするとどういうことが起きるか、

もしかすると自分の写真が使用される予定の4ページ予定の特集が、やむを得ない編集側の理由により2ページになる可能性があるということ。

つまりこちらは依頼された通りの仕事をして、仕事に対する質やかける仕事量は変わらないのにも関わらず、こちらの仕事とは無関係の編集側の都合で自分のギャランティの減額が起こり得る。

 

 

これはこの仕事をしていると珍しい事ではないので、同じくフォトグラファーをしている方や雑誌のお仕事をされたことがある方は一度は経験している人もいるかもしれませんが、私はそれがすごく理不尽だと思っていて。

なのでページ単価で仕事のオファーがきたら撮影に対する対価(自分の仕事のレート)を提示する、または掲載予定ページ数の金額を確定してページが増減しようとこちらへの金額は変わらないように交渉させていただき、お互いの条件が合致した際にのみ初めてお仕事をさせていただくようにしています。

 

こちらとしてはお仕事をいただいたらもちろん全力で取り組ませていただきますし、その対価としてギャランティをいただくのは自然だと考えているので、自分の仕事の質や量以外の要因で自分のギャランティが変動することは全くもって納得出来ないというのが私の意見です。

 

 

掲載枚数ベースでの支払いシステムによって露呈する信頼関係の無い仕事

加えてもう一つ、これはストリートスナップというジャンルの仕事にのみ当てはまること(?)かもしれないのですが、よく提示される条件として「写真の掲載枚数によりお支払い」という条件があります。

 

上と同じように例を出すと「今回は〜〜特集となっており、△△を身に着けた20名分のお洒落なニューヨーカーの女性を撮影していただきたいです。20人撮影していただいた中から編集部で使用する写真を選び、掲載する人数 × ○○円お支払いさせていただきます。」というような感じの依頼です。

つまり20人撮影したところで15人分の写真が使用されるかもしれないし、半分の10人分しか使用されないかもしれない、そして撮影のギャランティもそれに伴い変動するということ。

 

仮に初めてお仕事をさせていただく雑誌社さんからの依頼の場合、私は自分の仕事に誇りを持っていますしクライアントさんに納得してもらうだけの写真を納品させていただく自信があるため、そしてそれを形として見せることで私の仕事を信頼してもらうことも含めて初めてのお仕事では掲載ベースという条件で仕事をお受けすることも過去にはありましたが、今では既に何度か一緒にお仕事をさせていただいているクライアントさんだとその依頼の仕方は私に対する信頼やリスペクトを感じられないためお断りするかこちらのレートを提示させていただいています。

 

 

このような掲載ベースで支払いという仕事依頼での言い分はわかります。

編集部としては雑誌でより良い企画を提供するために、選りすぐったものだけを集めて質の高いものを作り読者さんに届けたい、という想いがあるんだと思います。

その考えは非常に共感できますし、こちらとしてももちろん最高の写真を提供し、紙面で最高のものを届けたいと思ってお仕事をさせていただいています。

 

 

ただここで問題なのは、この依頼のシステムが出来上がってしまっている根本的な部分。

それは編集部が外部フォトグラファー(や被写体を選定するコーディネーター)に対して信頼がないことだと思います。

 

ストリートスナップに関していえば、今でこそ私たちのようにストリートスナップを専門で撮っているフォトグラファーも出て来ていますが、数年前まではそれを専門とするフォトグラファーはほとんどいませんでした。

私がこれまで見て来て感じている現状だと、それまでの海外でのストリートスナップ撮影はスナップを専門としていないフォトグラファーさんたちへアルバイト感覚で仕事を依頼することしか出来ていなかったのが実際のところでしょう。

そうするとやはりスナップを専門としていないフォトグラファーさんの撮る写真や選んでくる被写体に対して編集部が絶対的な信頼を置けるはずもなく、多めに納品してもらって掲載分のみ支払いというシステムを取らざるを得なかったのかなと想像出来ます。

 

しかし今は仕事を依頼する前にフォトグラファーがどんな写真を撮り、どんなクライアントと仕事をしているか等も含めてウェブサイトやSNSなどを見たらすぐに分かる時代。

私の場合は20人撮影で15人分のギャランティをいただけるのか、5人分のギャランティをいただけるのか不確定のまま仕事を受けることは出来ないので、20人分納品で○○円というように事前に交渉させていただくことでお仕事をお受けすることが多いですが、本当に信頼できるフォトグラファーを見つけた場合は、もう少しお互いに信頼することができれば双方が納得した上でスムーズに仕事が運ぶことが多いかと思います。

 

 

失礼な金額での仕事依頼や理不尽なギャランティの減額

これはストリートスナップの仕事以外でもフリーランスの仕事をしている人ではどの業界でも共通していることなのかもしれませんが、あまりにも失礼な金額での仕事の依頼がくることが稀にあります。

私の友人も以前こんなことを呟いて、多くの共感を得てたことから他の業界でもこういうことはあるんだと思います。

失礼に値するような金額での依頼に関しては、仕事に対する妥当な金額が分からない場合やそれぞれのフォトグラファーの仕事のレートが分からない場合、定められた企画の予算の関係、などの理由によってあまりにも低い金額で仕事を依頼してしまうということであれば、さほど問題ではありません。

こちらから依頼メールに対して、その仕事がどのくらいの仕事量で、仕事に対する自分のレートはどのくらいなのか、どのくらいの金額ならばお仕事を引き受けさせていただけるかというのを説明して交渉すれば良いだけです。

ただし、下でさらに言及していますが企業側の無意識的な傲慢さによって提示された金額ならば大問題です。

 

 

また納品完了後に、理由も言われずギャランティの減額を提示されたこともありますが、言わずもがなそれは理不尽極まりなく、そこに私に対する尊敬は感じられません。

こちらの仕事内容に不備があった場合や納品した写真に問題があったなどの真っ当な理由があればこちらも心から謝罪し減額も受け入れますが、理由を聞いた際に明らかに編集側の都合だったこともあります。

 

 

業界を衰退させかねない大手企業の傲慢さ

低すぎる金額で仕事の依頼してきたり、理不尽なギャランティの減額を提示してくること、そしてページ単価や掲載ベースでの仕事の依頼がまかり通っている一番の原因は、雑誌社の傲慢さだと私は思っています。

 

例えば誰もが知っているようなAという雑誌があるとして「Aで仕事をさせてあげるんだから、このくらいの金額でいいでしょ?」「Aにクレジットが載るんだからその値段でも受けてくれるよね?」という、傲慢さが"無意識的に"雑誌社にはあるのではないかと。

流石に編集者さん個人で上にあげたようなことを露骨に思っていることはないと思いますし、私が今までやり取りさせていただいてきた編集者さんたちのどなたかが個人でそういう考えを持っているという訳では決してありませんが、理不尽な要求や依頼内容を見ると大手の会社全体としてそういった感覚が知らぬ間に依頼内容に出てしまっているのではないかと思ってしまいます。

仮に全くそういう感覚を持っていなくとも、外部の人間からはそう受け取られてしまう可能性がある=無意味に不信感が募る原因ともなるため、事実はどうだとしても依頼内容によってはかなりネガティブなイメージを与えかねないということです。

 

 

この大手の傲慢さは何も雑誌社とフォトグラファーの関係だけに限らず、他の業種や業界でも言えるかもしれませんが、無意識的な傲慢さは人を遠のかせ、人が遠のけば業界は衰退します。

確かに低い金額でも大手と仕事できること自体に意義を持ち、仕事を引き受ける方もいらっしゃるかと思うのですが、本来仕事を依頼する側も受ける側もお互いに信頼し尊敬し合わなければ仕事の質のバランスが保てないはずです。

 

確かに一昔前までは雑誌社はメディアとして天下を取っていた時代もあったのかもしれませんが、今はクリエイターも仕事を選べる時代です。

もっと言えばクリエイター自身で仕事を作り出せる時代ですらあり、立場としてクリエイターよりも雑誌社が上という勢力図は崩壊していることに気づいていない。

気づいていないから、いつまでたっても無意識的にお高く止まったまま外部の人間にまでリスペクトが及ばない。

 

 

ただでさえ雑誌が売れないと嘆き、売り上げ数は下がり予算も回らなくなってきているであろう現状で、さらに外部の人間を大切にしなければ優秀なクリエイターやアーティストはどんどん離れていくことは目に見えています。

外部の人間が離れていけば雑誌の企画内容や質もどんどん下がる可能性が高く、そうすると雑誌が売れなくなることで広告費が削られ予算が厳しくなる、そして更に外部の人間に無茶な要求をすることで人が離れていくという悪循環。

 

限られた予算内で内部の人間だけで仕事を完遂できるのであれば、社員への支払われる月給の範囲内で無茶な仕事を要求しようと私たち外部の人間は関係のない話ですが、そちらの都合を外部の人間にまで持ち込むことが続けば業界は衰退の一途を辿るでしょう。

企業側がこの態勢を続けていく限りこの業界で仕事としての信頼のやり取りは崩壊してしまいますが、ファッション業界に身を置く者として、フォトグラファーとして雑誌のお仕事をさせていただく者として、この業界が衰退して欲しくはありません。

だからこそこの業界で大手という名に甘んじず、今こそ雑誌社は目を覚ますべきだと私は思います。

 

 

仕事というのは本来は信頼と尊敬のやり取りであり、ギャランティはそれを具現化したもの。

「信頼=お金」だからこそ企業側も外部の人間に対して尊敬を示していただきたい。

 そして共に納得の行く質の高いものを読者さんに届けたい、そう思っています。

 

 

そんなことを思う中で、雑誌ではないですが私が4シーズンほどカタログ撮影をさせていただいている日本のバッグブランドmaster-pieceさんとの仕事は、今シーズン2017年秋冬カタログもとても気持ちの良い信頼のやり取りをさせていただき、完成し店頭で配布されているカタログも双方の満足のいくものとなりました。

こういった双方が対等な気持ちで仕事をさせていただけるのが私には理想的です。

 

 

ファッション業界に友人知人が多く、今までの一緒にお仕事をさせていただいた雑誌の編集部の方もこの記事に目を止めるかもしれません。

私のこの記事をきっかけに雑誌からの仕事は一切いただけなくなるかもしれません。

 

それでも、敢えて自分の立場を明確にしても尚、私個人を、私の仕事を信頼してくださり尊敬してくださるクライアントさんとのみ、今後も気持ちの良いお仕事をさせていただけたらと思っています。

私のことを信頼してくださっている方、企業様、改めてありがとうございます。

今までのクライアントさん、新規のクライアントさん、これからもご一緒にお仕事させていただけるのを楽しみにしております。

 

最後にもう一度書きますが、この文は特定の個人を批評するものではないことをご理解いただきけますと幸いです。

 

それでは、「ロン毛と坊主とニューヨーク(@longebose)」のロン毛、下里(@watarubob)でした。

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